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業界インタビュー

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桑野玲子さん

「土木技術者女性の会」の会長、東京大学生産技術研究所教授。
2014年6月。発足30周年を迎えた土木技術者女性の会は、内閣府の男女共同参画局が実施している「女性のチャレンジ賞」を受賞。輝いている女性やその団体として、社会へ与える功績が政府に認められた。東京大学やロンドン大学インペリアルカレッジなどで、教育者や研究者としての業績を着実に積み上げる一方、5年半以上にわたり土木技術者女性の会の会長も歴任している。
土木建築業界への女性参画について、時代の変遷や問題点に精通した先駆者。

必要なのは、ロールモデルとなる女性リーダー

これまでの建設業界と女性労働者との関係について、率直に桑野さんの印象をお聞かせいただけませんでしょうか?

 桑野玲子さん

私は土木が専門ですが、建設業界全体として見ても、今は女性が働きやすい方向へ、少しずつですがきちんとシフトしてきていると思いますよ。土木技術者女性の会で会長を務めて5年半以上になりますが、特に、業界の人手不足解消策などに代表される、建設女子を増やそうという時代の流れは強いです。内閣も、国策として色々と条件を考えたり制度を整えたりして、あの手この手で、女性の社会参画をサポートしようとしていますよね。そして、その真剣度を感じているところでもあります。

実は、業界への女性参画については、多数派を占める男性から「それは女性の話でしょ」という他人事という雰囲気が、これまでは拭えませんでした笑。一部だけの動きと申しますか…。「業界のイメージを回復するために、女性を起用しよう!だから取り組むのは女性自身だろう」という少し閉鎖的な流れの中で、女性にだけスポットライトを当てていた動きであったような印象です。しかし、今の風潮は、そんな考え方を男性自身が改めないといけないと感じている気がします。

これは建設業界に限った話ではないと思いますが、既存の業界へ女性の進出を促そうとしたら、それは、女性だけの話ではないですよね。女性にとって働きやすい環境とは、誰にとっても働きやすい環境です。

建設業界へ女性を増やすためには、どんな取り組みが必要なんでしょう?

桑野玲子さん

女性のリーダーを増やすこと、ロールモデル(お手本)を確立することですね。もちろん効果的な策はそれだけではありませんが、少数派である女性たちの共通の悩みは、お手本となる、目指すような存在がいないことなのです。これは土木技術者女性の会の参加者へ意見を聞いても、とても多く聞かれます。女性技術者のくじける原因の一つでもあるのです。「ああいう風になりたい」とか、憧れるような女性のお手本がいれば、多くの女性を惹き付け勇気づけることができます。多少大変なことがあっても、乗り越えることができるのではないかなとも思うのです。

最終的に、女性が現場で働くことが普通の環境になるには、いろんなポジションの人が、さまざまな立場で働いているという状況が理想です。しかしまず取り組むべきなのは、リーダーを増やすことだと思います。ロールモデルを増やすために、リーダーを増やすという発想です。

「努力をあまりしてこなかったという側面はあると思っています」

現状では、どんな女性が業界で活躍されているんでしょうか?

桑野玲子さん

今は女性が現場にいても珍しくはない時代になりました。相変わらず少数派だとは思いますけれども、20年くらい前なら「現場に女性がいるからびっくりする」とか、そういう感じでした。今は違います。建設会社でも、女性を現場へ配属することが少なくありません。そうした少数派の中でも、現場へ行って働いている女性たちは物作りが好きな人が多い印象ですね。土木なら道だったり橋だったりです。でも実は、業界で活躍している女性は、現場以外にもたくさんいます。

土木業界の例を挙げると、造る建てる以外の周辺分野で活動している女性はとても多いです。振り返ってみると、土木技術者女性の会が発足した30年以上前から、都市計画とか街づくりとか、衛生関係、環境など、土木の周辺領域の分野で活躍される女性が多かったようです。今は当時と時代がずいぶん変わったこともあり、以前よりも「環境を維持する」とか「インフラの維持管理」とか、造る建てること以外へのフォーカスが急速に広がっています。それを考えると、女性が昔から携わってきた土木業界の領域の幅は、順調に受け皿を広げているように思うのです。

業界に女性が少ない理由については、どのようなご意見をお持ちですか?

いろいろな理由があると思います。一つに断定することもできないですが…ただ、業界にいる私たちが、仕事の意義や役割を、女性を含めた一般の方たちに理解してもらうような努力をあまりしてこなかったという側面はあると思っています。

建設業界は、道や橋を造り電気や水などのインフラ整備に深くつながりを持つ業界であり、人間の命の安全にかかわるとても生活に身近な仕事です。そうした仕事の意義や使命といった観点から、女性へ業界をアピールする必要もあるかと思います。

しかし一方で、土木や建設の3Kに代表されるようなマイナスイメージは、残念ながら根強いです。加えて、業界の最前線で働くいわゆる土木のエンジニアなどは、普段の仕事を匿名で行っている事情も関係していると思います。個人名をあえて伏せて仕事をしているわけではありませんけれども、通常はチームで仕事をしますので、橋の設計が誰かという情報は、なかなか表へ出ない業界です。つまり、自分の仕事を自らアピールすることに、そもそもあまり慣れていない業界である、という事情に、私たち自らが配慮する必要があるのだと思います。さらに、不慣れな人なりにアピールする努力をしても、談合のような事件が報道されると、その努力は水の泡です。イメージが消えて白紙に戻るならまだしも、余計に世の中のイメージはマイナスへと傾いてしまう悪循環が、問題の背景に隠れているように感じています。

小学生の夢が「現場監督!」にならない理由

業界のイメージを回復に結び付けるアイデアなどは、ないんでしょうか?

実はあります笑。最近は、本当にさまざまなアピールの動きがあります。しかも、草の根運動のような根本的な取り組みなので、時間はかかるかもしれませんが、既に効果は実感しています。

例えば、土木の現場を見学してもらう動きなどです。以前の工事現場は、囲われていて、埃も舞うし、中で実際にどんな作業をしているか分からない状態だったと思うのですが、最近は中を見えるようにして、見学を歓迎する動きも増えています。具体的な例を挙げると、私自身が昨年に行った東京港トンネルの見学会が大変好評でした。旅行会社と土木学会が一緒になって企画した取り組みなのですが、東京港トンネルの開通前に、工事現場の見学会を実施したのです。一般の方にはお金を払って見学に来てもらって、案内をしながらいろいろと見てご説明しました。そうすると「工事現場のイメージが180度変わった」「粗っぽい作業員が作業するだけというイメージから変わった」という参加者がとても多かったのです。嬉しかったのと同時に、私はみなさんの反応に大変驚きました。

小学生に将来の夢を聞いて「現場監督!」と答えないのは、野球選手やサッカー選手や学校の先生などに比べて、建設業界が明らかに遠い存在だからです。しかし、父親や家族が大工さんだったり現場で働く人だったりしたら、その小学生にとって、現場監督はすごく身近な存在になるはずです。見学会の参加者のみなさんには、安全と環境に配慮をして、とても緻密な工事をしているのだということなども理解していただけました。もっともっと、身近に建設業界の中身に触れる機会を増やすことで、イメージを刷新する努力は必要だと実感しているところです。

桑野玲子さん

建設業界を目指す女性へ向けて、応援メッセージをお願いします。

もし興味を感じていただいたら、できないことは何もないので、どんどんチャレンジしてほしいと思います。建設業界だからできない、女性だからできないってことは一切ないです。現場だろうがどこだろうが、重たいものは重機が運ぶだろうし笑。そういう制約もないし、気後れも必要ありません。先ほども申し上げたように、建設業界は物を造っているだけではありません。カバーしている分野が広いので、ご自身の特性を活かせる場が必ずあります。それを忘れないでほしいです。

このサイトのように、民間の会社さんがこうして業界や女性の魅力を伝えてくれることは、とても素晴らしいことだと思います。つまり、女性の働き手が、会社の利益につながっていくという意識のもとでこのサイトを運営されているわけですから。今までは、ここまではなかなか女性の力で情報を発信することは難しかったと思います。しかし今の時代は、女性にとって追い風だと感じますね。

業界が取り込もうとしているのは、学生だけでなく育児を終えた世代などのさまざまな状況にいる女性です。ワークシェアリングなどがうまくできれば、可能性はどんどん広がると思います。たくさんの方に興味を持っていただいて、仕事や価値観や働き方などは社会全体でシェアしてくことで、女性ももっと活躍できるはずだと私は信じています。

~取材を終えて 編集後記~

一部しかご紹介できないのが残念でなりませんが、とても興味深いお話をお聞きすることができました。桑野さんご自身の経験をお聞きしたときは「一筋縄ではいかない依頼が本社へ来るのですが、そんな相手の要求に応えて、相手から感謝されると、すごく嬉しかったことを覚えています」と、現場以外で働く業界女性の感じるやりがいを語ってくださいました。

他にも本編ではご紹介できませんでしたが、1983年に発足した土木技術者女性の会のお話も印象深いです。「その当時は業界で非常に珍しかった女性たちが集まって座談会をする企画がきっかけになり、会が発足しました。現在のようにネットやSNSがない時代であることを考えると、一堂に会すること自体が、まるで砂丘から金の粒を見つけ出すような、かなり興奮するような集まりだったと思います。発足当時の30名の女性たちが、それぞれの境遇で孤軍奮闘していたことも想像に難しくないですよね」このお話を聞いて、現代を生きる私たちが、次の時代の担い手になろうと、盛り上がった建設×女子部でした笑。

土木技術者女性の会では、年一回の総会、支部ごとの見学会や勉強会、懇親会、若い学生さんへ向けたキャリアセミナーなど、実に多彩な活動をされています。そうした業界の横のつながりを強くすることで、私たちも新しい情報を発信していきたいと考えています!

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